関野忠明社長
(うなよし/静岡県三島市)
『ウナギ資源を守る事が先決』
近年のシラスウナギ不漁、それに伴う相場高騰から、ウナギ離れが進む昨今。蒲焼店を取り巻く環境も大きく変わり、廃業を余儀なくされたお店も少なくない。未だ仕入れ値は高止まりしているものの、幸いにシラスウナギ漁が5年振りに好調さを見せており、秋以降、相場、そして供給面でようやく一息つけそうな、明るい兆しも見えてきた。
ただ、手放しで喜べないのは、4月からの消費税増税、未だ何ら解決していないウナギ資源問題、かつ、近年のウナギマーケットの大幅縮小など、課題が山積していることだ。
「うちではこれまで5回にわたり、細かく値上げをさせていただきました。今回4月の消費税増税に関してですが、最低でも1%分、値上げをさせていただく予定です。また、久しぶりにシラスウナギ漁が好調ですが、相場の先行きがどうなるのか、ある程度、見渡せた段階で、はじめてメニュー価格をどうするのか考えていきたいと思います。安易に値下げることは危険かなと思います」
そもそも相場高騰の原因になったのは、“4年連続のシラスウナギ不漁”に他ならない。今年は幸いにも久方ぶりの好漁気配となっているが、ウナギ資源保護に関しては何ら解決されていない。昨年2月には環境省がニホンウナギをレッドリストに登録、業界内外を根底から震撼させ、水産庁も資源保護に乗り出した。
「昨年末、“和食”が無形文化遺産に登録され、ウナギもどのようにアピールしていくか、との話も出ているかと思います。しかし、私はちょっと待てよ、と言いたい。まずは、ウナギ資源を守る事が先決ではないでしょうか。ウナギ資源が増えて、はじめて“無形文化遺産”の名称を使ったウナギの売り方も出来るのだと思います。ウナギ屋としてどんな資源保護が出来るか、ですが、まずは“天然ウナギを買わない、使わない”こと。“漁をされている方はどうするのだ?“の声も聞こえてきそうですが浜松では“天然ウナギを買い取り、沖合で放流する”取組みが既に始まっていますし、その動きが全国に波及することを望んでいます」
シラスウナギ漁は好調だが、気になる相場もまだまだ、高値に張り付いているのが現状で、マーケットは年々、減少の一途を辿っている。
「店が生き残るためには、これからも“本物”をしっかり、提供していくことですね。そして厳しい環境下、経営面を考えると営業調整も必要なのではないかと思います。これまで私どもでは8時ごろまで営業していましたが、最近では夕方頃、お客さんの“波”が途切れたら、ぴたっと店を閉めさせていただいています。儲からない時間帯は、人件費の問題もありますからね。“資源”も“お店”も両方なければ、商売出来ません。危機感を持ち、資源問題を考えながら、商売もしっかり考えていく。“今を乗り越えられれば”との声もよく聞きますが、“乗り切る、乗り切らない”の問題ではなく、“明日をどう生きるか”、それが今の世の中、大事だと思います」
[データ]
「うなよし」
〒411-0848 静岡県三島市緑町21-6
電話:055-975-3340

*「蒲焼店が考える“これから”」は現在、日本養殖新聞で連載中