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「ワシントン条約に向けた?歪んだ“ウナギ報道”」

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日本養殖新聞3月15日号掲載
<鰻に魅せられて その50>


“シラスウナギ激減”“世界の7割のウナギを消費”といった、大きく歪んだ報道による、ワシントン条約への影響が懸念される。

シラス資源が長いスパンで見れば緩やかに減少傾向にある事を否定する気は毛頭ない。しかし、冒頭の歪んだ“ウナギ報道”について心底、辟易している。これまで多くのメディアをはじめ、一部の専門家も鬼の首を取ったかのように煽り、報道してきた。

なかでも“シラスウナギ激減”ニュースでよく用いられたのが“ニホンウナギ稚魚・国内採捕量の推移”の折れ線グラフ。昭和30年代を見ると、その数は250トンにも迫る水準で近年の採捕水準20〜25トンに比べ、あたかもシラスウナギが“激減”しているかのような、誤解を招きかねない。

しかし、このグラフはすでに水産庁によって修正されている。本紙も昨年の夏期特集号(8/10号)で掲載済みだが、そのなかで水産庁の太田愼吾課長が「シラスウナギの漁獲量については、ピーク時には250トン近い漁獲量が記録されています。しかし、養殖業者の間からは“昔は200トンも池入れしていない”との声が出ており、実際、昔のデータにはシラスだけでなくクロコの漁獲量も含まれていると考えられていますので、これを差し引いて考えることが必要です。しかしながら、クロコがどの程度含まれているかについて具体的なデータが無いことから実際のシラスウナギの漁獲量の推移を正確に知ることは困難です」と回答している。

これらのことをあえて取り上げるのは来年に控えるワシントン条約締約国会議が迫っている事に他ならない。すでにニホンウナギを取り巻く状況はかなり厳しいと言わざるを得ない。前述した“シラスウナギ激減”報道が頻繁に流れれば、ワシントン条約に向けてより心証を悪くさせる。それだけに即刻、煽るような報道はやめていただきたい。

▼さらには、ウナギに関する報道でよく耳にする“世界の7割のウナギが日本で消費されています”という、お決まりのフレーズ。

これはあくまで2000年当時の各種データを用いたもの(TRAFFIC のパンフレットに掲載/参考:FAO[国際連合食糧農業機関、財務省貿易統計、農水省漁業養殖業生産統計年報])で、当時は日本国内活鰻流通量が実に約16万トン(活鰻換算)とピークの年であり、日本の消費が全体の約7割を占めていた事は間違いない。

しかし、同様の算出方法で最新のFAOのデータ(2012年)を用いると、台湾、中国、韓国、日本を合わせた養殖生産量は23万6344トンになる。ちなみにその年の日本国内活鰻流通量は3万7203トン、単純にその割合を計算すると15.8%となり、近年においては“7割“という数字がいかに現実離れしたものか、明白だ。これで“日本が世界の大半のウナギを消費している”事実は根底から覆されることになる。

“シラスウナギ激減”“世界の7割のウナギを消費”といった、大きく歪んだ報道の、ワシントン条約に対する影響は計り知れない。開催される来年までに、いかにねじ曲がったイメージを払拭出来るか、そのアピールも必要だろう。

<うなっくす>
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