水谷 圭店長
(うなぎ 与八/三重県桑名市)
『消費者を思い、力を合わせる』
今年は幸いなことにシラスウナギ好漁に終わったが、一方で世界的権威あるIUCN(国際自然保護連合)がニホンウナギを絶滅危惧種として登録、一般メディアの中には“もう、食べられなくなる?”と煽るような報道も散見された。最近の売れ行き、お客の反応に変化は表れているのか。
「近年のシラスウナギ不漁という事実もあり、IUCNのレッドリストに登録されたことは仕方がないことでしょう。それによって漁期の制限などでうなぎ業界の将来が明るくなることを望みます。私の店ではIUCN登録の報道、翌日から早速、お客様や取引業者に『大変だね、値上げやなくなる前に食べに来たよ(笑)』と日本人特有の話題に食いつく行動で前年度より大幅に良いです。幸いにも梅雨に入っても雨が全く降らないのも集客の良さに繋がってます。
前述したように、ウナギ資源を取り巻く状況は以前にも増して厳しくなっている。水産庁も近年、ウナギ資源保護に対しては精力的な働きかけを行うなか、貴店ではどのように資源保護を考えているか?
「まずは活鰻のサイズをUPしたことです。次に私の店では値上げは最小限にして全てのメニューを1切れ減らしました。そうすることで年間の鰻の使用量が減り、支払いも楽でした。もう一つの取り組みはお客様が釣ってきた天然うなぎを捌いて欲しいとの問い合わせを全てお断りし、親うなぎ保護の話をさせてもらいました」
ウナギ資源問題の他、近年はうなぎ職人不足も避けては通れない問題となっているが、育成、確保についてどう考えているか?またマーケット縮小の中でのPRはどうしているか?
「これだけうなぎ業界が儲からない年が続いただけに、魅力ある職業とは決して言えないです。例えば、近年の美容師業界は専門学校から週休2日制の美容室にしか生徒を紹介しないそうです。鰻業界も働く環境を整えないと人材確保は難しそうです。
一方、マーケットに関してですが漁師、生産者、問屋、どんぶり屋の全ての人が程よく儲けること、それにはうなぎに関わる全ての人たちがうなぎを食べる消費者のことを思い、力を合わせることです。ちなみにうちではマーケットの縮小はあまりみられないです。お店では1500円でランチうなぎ丼を提供していますが、これは技術や鰻の安売りではなく、少しの量でもいいから鰻を食べ続けてもらうためのメニューで、週1のお客様も多いです」
近年、業界は大きく様変わりしているが、これからの鰻屋としてはどう今後を進んでいくべきか?またFacebook、LINEなどSNSにおける蒲焼店さん同士の交流についてはどう考えているか?
「ネットでの出会いはあくまで入口です。そこから実際に会いに行きます。先週は店が終わってから深夜まで、昨日も喫茶店でうなぎの話で盛り上がりました。最後に鰻(全ての食材)に感謝です。また、今後のうなぎ屋は最終になるに連れて悪くなるヒネ仔をどう調理するかの技術向上もより大切になっていきます。それだけに、生産者の方も1年通して良い鰻を育ててもらい、問屋の方も良い池を特定してくれるようになればいいです」
[データ]
「うなぎ 与八」
〒511-0947 三重県桑名市大仲新田字屋敷319-42
TEL&FAX:0594-32-1548

*「蒲焼店が考える“これから”」は現在、日本養殖新聞で連載中