河原 亮店長
(うなぎ処 山道/福岡市中央区)
「中高、専門学校等とタイアップ、職場体験などの 機会を増やし職人を増やす」
猛暑となった夏の土用丑商戦が今や懐かしいぐらい、スーパー・量販店では秋の味覚の代表であるサンマが陳列され、さすがに季節の移り変わりを感じさせている。また今夏は、ニホンウナギが絶滅危惧種としてIUCNのレッドリストに掲載されるといったインパクトのあるニュースはなく、昨年に比べればメディアの露出も少なかったように見えた。
「今年の7月20日にオープンしたばかりなので、昨年との比較は出来ません。しかし、土用の丑の日はオープン前にチラシを多く配布したことにより、予想以上の来客がありました」
近年、シラスウナギ不漁を背景に相場は高騰、各地の専門店ではメニュー価格の値上げから客離れも不可避だった。そうした離れたお客を一人でも多く取り戻すため、あるいは販促のために何らかの対策は?また、貴店における商売、料理などに対するこだわりは?
「店内でのお食事の他に、今後出前の実施も検討中です。立地条件的に出前の需要が多いエリアで、特にお歳を召された方で、お店まで来店することが困難な方への出前も視野に入れて、販路を拡げたいと考えています。またお店のこだわりとしては、本社が宮崎県にあるのでお店で使用するメインとなる食材は宮崎県産にこだわるようにしています。料理へのこだわりとしては、とにかく鰻は焼き置きをせずに、注文を受けて、生から焼くことを心がけています」
一方、来年9月にワシントン条約締約国会議が行われ、鰻貿易に規制がかかるのか否か注目が集まっている。掲載回避のために、ウナギ資源管理対策も施され、すでに東アジア四カ国・地域において昨年9月、シラスウナギ池入れ量を前年の20%マイナスにすることで合意に至っている。これらについての意見はどうだろうか。
「今後、国内での鰻の流通量が減少すると、産地偽装などの問題が予想されます。専門店ごとに産地表示を徹底し、お客様からの不信感を払拭していくことが大切だと思います」
また、専門店にとってもうひとつ大きな問題と言えるのが、職人不足だろう。“加工品で代用”といった嫌なウワサも聞かれる昨今で、少子高齢化を背景に“ウナギ職人の未来”にも不安を覚えるところだ。はたして、これらウナギ職人問題についてどのような考えを持っているか。
「鰻料理に興味のある人材を早急に発掘し、専門店等での若手育成が大切だと思います。専門性の高い鰻調理がどのようなものかを先ず知ってもらう為に、中高、専門学校等とタイアップして積極的に職場体験などの機会を増やしていくことが大切だと思います。当店では職人見習いとしての求人募集をかけ、現在3名の見習いに仕事を教えています」
近年は前述したように、シラス不漁による相場高騰、ワシントン条約締約国会議を来年に控えた資源、また供給問題、そしてウナギ職人不足問題など、業界を取り巻く環境は大きく様変わりしている。当然のように、専門店を取り巻く環境も一昔前に比べても激変している。そうしたなかで、“専門店”としては今後、どうあるべきか。
「鰻専門店は他の飲食業に比べても、平均して客単価が高いと思います。しかしながら、“高い”からこそ、職人としての仕事の中身も含め、お客様に満足していただいて、初めてそれだけの値段が取れる商売だと思います。これからも変わらず、鰻専門店でしか味わえない味をご提供できるよう日々努力していきます」
[データ]
「うなぎ処 山道」
〒810-0022 福岡市中央区薬院4-3-10 アバンティ薬院1F
電話:092-753-6102
*「蒲焼店が考える“これから”」は現在、日本養殖新聞で連載中